講演題目: 原子層物質のインダクタンスとキャパシタンス
講師: 田中未羽子 東京大学物性研究所 助教
日時: 2026年6月10日(水)16:00~17:00
場所: 理学部2-409室
要旨:
グラフェンに代表される原子層のvan der Waals物質は、異種材料との積層やゲート電圧による制御など、多様なパラメータを精密に操作できるという特長を持ち、凝縮系物理の研究における理想的なモデル系の一つとなっている。しかし、その体積が極めて小さいため利用可能な測定手法は限られており、これまでの研究は主に電気伝導測定や可視光領域の光学測定に集中してきた。一方で、系によっては電気抵抗は必ずしも情報量の多い物理量ではない。例えば超伝導体では抵抗は系の詳細によらずゼロとなり、絶縁体では抵抗が非常に大きく測定が困難となる場合が多い。これに対し、超伝導体におけるインダクタンスや、絶縁体におけるキャパシタンス(誘電率)は有限の値を保ち、バンド内の電子応答を直接反映する物理量である。しかしながら、これらの物性は原子層物質において測定が困難、あるいはこれまで十分に注目されてこなかった。本講演では、原子層物質におけるインダクタンスおよびキャパシタンス測定に関する我々の最近の研究を紹介し、ナノ物質に対する新しい測定手法の展望について概説する。具体的には、超伝導体に対しては数原子層程度の試料にも適用可能なインダクタンス測定手法を開発し、ツイスト二層グラフェンにおいて量子幾何効果に起因する超流動剛性の増強を初めて直接観測した。また絶縁体系に対しては、原子層マルチフェロイック物質の誘電応答に基づく磁気電気結合の定量評価や、高周波測定による原子層磁性体の磁気ダイナミクスの観測について報告する。
