「反強磁性由来の巨大な異常ホール効果を示す新規物質」小手川 恒 氏

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講演題目:反強磁性由来の巨大な異常ホール効果を示す新規物質

講師:    小手川 恒 (神戸大学大学院理学研究科・教授)

日時:    2026年1月27日 13:00 – 14:30

場所:    理学部2号館 2-211 講義室

要旨
物質の性質や応答現象が対称性に支配されることは古くから知られており,異常ホー
ル効果もその例外ではない.長い間,異常ホール効果は強磁性体特有の応答現象であ
り,その発生には大きな磁化が必要だと考えられてきた.しかし,近年の研究により,
異常ホール効果の発生に本質的に必要なものは磁化そのものではなく「強磁性と同じ
対称性の破れ」であり,反強磁性であっても大きな異常ホール効果が生じ得ることが
明らかになってきた.この理解や概念は,巨大な異常ホール効果を示すことで注目を
集めているMn3Sn [1]の研究によって大きく進展し、最近では交替磁性体にまで波及し
ている。
そのような背景のもと,我々は反強磁性由来の異常ホール効果を示す物質としてNbMnP,
Ce2CuGe6 を見出した [2,3].さらに最近では,室温で異常ホール効果を示す物質
NbMnAsの発見にも至った [4].これらの物質の異常ホール伝導度はMn3Snに匹敵し,物
質によってはそれを上回るほど大きい.加えて,Ce2CuGe6 においてCeが磁性を担うf
電子系に拡張された点と,NbMnP,Ce2CuGe6では純良結晶を得られる点は,これまでに
ない特徴がある.これらを活かしたことによる現象理解の進展と,新たな展開につい
て解説する.

[1] S. Nakatsuji et al., Nature 527, 212 (2015).
[2] H. Kotegawa et al., npj Quantum Mater. 8, 58 (2023).
[3] H. Kotegawa et al., Phys. Rev. Lett. 133, 106301 (2024).
[4] Y. Arai et al., to appear in J. Phys. Soc. Jpn.