「ダイヤモンドを用いた熱駆動メーザー」 久保結丸 氏

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講演題目: ダイヤモンドを用いた熱駆動メーザー

講師: 久保結丸 氏 (沖縄科学技術大学院大学、サイエンステクノロジーアソシエイツ)

日時: 2022年9月20日(火)16:30-18:00

場所: 理学部5号館 5-201

要旨:

量子コンピュータの研究開発競争が世界中で繰り広げられているが,この急速な 進歩の背景には極低温におけるマイクロ波量子情報技術の進展がある.とりわ け,その根幹をなすのが極低温(約10 mK)における超微弱なマイクロ波信号の増 幅であり,これを可能にしたのが超伝導パラメトリック増幅である.超伝導パラ メトリック増幅器は雑音を重畳することなく無散逸で信号を増幅する優れた汎用 デバイスである.
このような研究背景において,我々はスピンメーザー(誘導放出によるマイクロ 波増幅)を用いることで極めて高い飽和パワーを持ちながらも超低雑音な量子マ イクロ波増幅を実現した.スピンメーザーは半世紀以上前に廃れてしまった古い 研究テーマであるが,当時は実現不可能だった極低温においては極めて有用な 「古くて新しい」量子技術になることを見出した. 本講演では,この極低温環境におけるメーザーに関連した「熱駆動メーザー」を 紹介する.熱駆動メーザーのアイデアは古く,ScovilとSchulz-DuBoisによって 提唱された [Phys. Rev. Lett. 2, 262 (1959)] が,未だ実現には至っていな かった.我々は,ダイヤモンド結晶中の不純物スピンを用いることで極低温にお いて熱駆動メーザー「増幅」を実現した.さらに,デバイスの特性を向上させれ ば熱駆動メーザー「発振」も実現可能なことを示す.

世話人: 井原慶彦
(北海道大学大学院理学研究院物理学部門)